「誰もいない海」で...

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お盆が過ぎ、すっかり涼しくなった一昨日17日の夕方、

気分転換も兼ねて、妻と石狩浜にドライブに出かけました。

 

石狩浜が眺め渡せる小さな展望台に立つと、

すぐ近くに「喜びも悲しみも幾年月」の舞台となった灯台が迫ります。

「おいら岬の灯台守は…」の歌で知られる、あの灯台です。

http://www1.toptower.ne.jp/users/ht1/newpage33.htm

 

 

そして、すっかり秋の気配が色濃く漂う日本海に目を向けると、

静かな波に夕陽が幻想的に映え、その手前には、

ハマナスの群生とススキの穂が、どこまでも広がっていました。


 夏が過ぎ去った浜辺には、全く人影が見当たりません。

盆(16日)まではたぶんそれなりに賑わっていたのでしょうが、

お盆が明けた17日は仕事が始まった月曜日でしたから、

それはそれはとても静かで寂しい光景が広がっていたのです。

 

ずっと昔、北海道にやってきたばかりのころ、

ぼくはさっそく中古の四輪駆動車(レオーネ)を手に入れて、

よく石狩浜や大浜、そして支笏湖周辺の林道を走ったものでした。

そのころは車にキャンプ道具や珈琲、食糧などを常備していて、

気に入った場所が見つかると、そこでコーヒーを沸かして、

ゆったりのんびりと一人で大自然の気配を感受していたのです。

 

若き日?のそんな記憶が「誰もいない海」を見て蘇り、

そうだ、久しぶりに石狩浜の砂浜を走ってみよう!

そう思って、かつてよく入った浜辺への入り口へと向かいました。

日本海の波打ち際に車を止め、夕陽の海と波の呼吸を感じたかったからです。

 

ところが、なかなかかつての入り口が見つかりません。

道路の両サイドにはどこまでも縄が張られ、

「立ち入り禁止」「遊泳禁止」の看板があちこちにあります。

そんななか、やっと1カ所、海辺へと続く小径を見つけました。

 

その道を入って行くと、すぐ目の前に波打ち際が現れてきたものの、

道路がずいぶんひどい状態で、かなりの急傾斜を降りなければなりません。

一気に降りてしまおう!と思って近づいて確認してみたところ、

やっぱり無理と判断して、そのままバックで車道まで戻りました。

そしてしばらく走っていたら、もう一つの入り口が見つかりました。

 

よし、ここから入ろう! そう思って一気に車を砂浜に乗り入れました。

四輪駆動車ですから、たぶん大丈夫!

かつては、いつもやっていたことなのだから…。

 

ところが、それは大間違いでした。過信でした。

最初はなんとか走ることができたものの、やがて砂に車輪が埋まり、

ついに全く動かなくなってしまったのです。

 

さて、どうしよう!

浜辺には全く人影が見当たりません。

「誰もいない海」で、のんびりゆったり初秋のひとときを過ごすどころか、

「誰かの助け」を求めなければならなくなってしまったのです。

夕陽はもう落ちかけていますから、のんびり構えることはできません。

 

そのとき、思いました。

なぜ、こんなことが起こってしまったのだろうか?

でも、起こったことには必ず何らかの意味があります。

いったい、どんな意味があるというのだろう!

そんなふうに思いながら、とにかく脱出の方策を考えていました。

 

そういえば、海ばかりを見ていてよくは確認してなかったけど、

砂浜に入る小径の途中に車があり、人の姿があったことに気づきました。

妻は「ひょっとしたらJAFの車だったかもしれない」と言います。

そう言われれば、そうかもしれません。

 

……実は、……そうだったのです!

なんと、そこになぜかJAFの車と人がいたのでした。

「助かったぁ…」そう思ってその人にお願いしたのですが、

これがそう簡単には行きませんでした。

牽引するためのフックや道具などがなかったからです。

 

そこでその人はスコップで砂をかきだし、ぼくに変わって運転すると、

なんとか少しは車を動かすことができました。

でも、はい、それまで! 車は再び完全に動かなくなってしまいました。

 

その人は言いました。

この浜ではこうした事故が相次いでいることから、

JAFにSOSを出しても「JAFでは無理。ごめん!」と言って断るそうです。

そう言いながら、「これ以上は無理」と言って帰ってしまいそうでした。

しかし、彼に帰られては大変です。

そこでぼくはスコップを借り、改めて砂を掘り出し始めました。

 

頼むだけではなく、まずはぼく自身がやることが大切です。

実際、スコップさえあるなら、きっと何とかできると思っていました。

車輪の周りだけをやってもダメかもしれませんが、

じっくりゆっくり時間をかけ、車の周辺を広く掘り起こして整えていけば、

砂の下にはきっと固い部分があるはずです。

そこから確かな小径まで脱出路を開いていくならば、

たぶん自力で脱出することが可能でしょう。

ただしそれにはスコッップが不可欠ですから、借りてせっせと始めました。

 

するとJAFの人は「バックでやってみよう」と言って再び手を貸してくれました。

その結果、ついになんとか脱出することができました。

そのとき、夕陽はすでに沈み、辺りには夕闇が迫ってきていました。

 

JAFに救出を頼んだ場合、書類に書き込んで一件落着となります。

そんなわけで書類のことをぼくのほうから言い出したのですが、

「いいですよ。仕事のついでのことですから」と言いました。

それではあまりにも申し訳ないと思い、

「帰りに食事か珈琲でも」といって、少しお礼をして別れました。

 

そのあと妻が、「これは実際にあったことだわよね」と言いました。

誰もいない海での、しかも夕暮れの幻想的な世界での出来事だったこともあり、

その時間のことが、まるで幻覚・幻想であったように思えてきたからです。

 

たしかに、人気がほとんど感じられなかった浜辺に、

実はなぜか人と車がいて、しかもそれがJAFの人と車だった。

これは出来すぎた話と言えるでしょう〈笑〉。

 

しかも書類も書かせずにあっという間に走っていってしまったのですから、

その出来事があったという「証拠」は全く何も残っていません。

しかし、車が砂に埋まったのは事実であり、そこから脱出したことも事実です。

それはそれは、本当に不思議にしてありがたい体験でした。

 

そんな体験をして、つくづく思いました。

いろんなことが、不思議な力でつながっているんだなぁ…と。

そして、車を救い出してくれたJAFの人に深く感謝したのでしたが、

その人をこの浜に呼んだ「誰かさん」にも感謝しなければなりません。

もしもその「誰かさん」がトラブルを起こさなかったとしたら、

JAFの人と車がこの浜に来ることは決してなかったからです。

 

JAFの人は言いました。呼ばれても断ることが多いのだと。

でも、その「誰かさん」は、どんなふうにお願いしたかは分かりませんが、

とにかくJAFを石狩浜まで呼び出してくれたのです。

しかも、ぼくがトラブルを起こす直前にJAFの仕事が終わっていたからこそ、

JAFの人はすぐにぼくのところまで来てくれたのでした。

もう少しぼくらの事故が遅かったとしたら、すでに帰っていたでしょう。

 

こう考えると、まさに絶妙なタイミングで絶妙な場所でトラブったことになります。

もう少し場所が離れていたら、あるいは時間がずれていたとしたなら、

このようなラッキーな出来事には遭遇できなかったことでしょう。

 

顔も知らないその「誰かさん」は、間接的にぼくらを救ってくれました。

「誰もいないはずの海」で「誰かさん」がぼくに救いの手を差し伸べてくれたのです。

こういったことは、実は人生のあちこちであることなのでしょう。

ただ、そのことに気づかないだけなのだと思います。

 

それにしても「悪運が強いなぁ」とつくづく思いました〈笑〉。

こういったことはこれまでにもよくありましたが、

大きな力がどこかで働いていることを強く感じさせられます。

どんな出会いにも、出来事にも、必ず何らかの意味があります。

今回の車のハプニングと、思いがけないラッキーな救出劇は、

「大いなる力の働き」を改めて実感させてくれることになりました。

そのことを肝に銘じて生きよ!というメッセージだったのかもしれません。

 

というわけで、誰もいない海で波の呼吸を味わうことはできませんでしたが、

その代わりにいま『誰もいない海』の歌詞と曲を聴きながら、

一昨日の出来事のメッセージを改めて噛みしめてみたいと思っています。

 

 

  今はもう秋 誰もいない海

  知らん顔して 人がゆきすぎても

  私は忘れない 海に約束したから

  つらくても つらくても

  死にはしないと

 

  今はもう秋 誰もいない海

  たった一つの 夢が破れても

  私は忘れない 砂に約束したから

  淋しくても 淋しくても

  死にはしないと

 

  今はもう秋 誰もいない海

  いとしい面影 帰らなくても

  私は忘れない 空に約束したから

  ひとりでも ひとりでも

  死にはしないと

 

  ひとりでも ひとりでも

  死にはしないと

 

 

★曲と歌詞

http://www.fukuchan.ac/music/j-folk2/daremoinaiumi.html

★トワ・エ・モア

http://www.youtube.com/watch?v=IgGS9OyrQks

★越路吹雪

http://www.youtube.com/watch?v=WU2Ac1t5xcw

 

稲田芳弘

 

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