君はもういないけれど...

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先日アップした「宣告から4年...じあいネットのこと」に対して、
その後、うれしいレスポンスが相次いでいます。
「ほら、前に向かって進みなさい!」と背中を押していただいたようで、
本当に、ありがたい気持ちでいっぱいです。

CDでは「ぼくのガンの経緯」について語るつもりですので、
どんな話をしたらいいだろうと思い、いろいろメモしてみました。
で、いざ書き出していくと次々といろんなことが思い起こされ、
話題がどんどん広がっていってしまいます。
しかしそれらを全部話したら、とてもCD2枚程度では収まりません。
ためしに何度か録音してみましたが、どうもうまく配分できません。
ガンというのはそれくらい奥が深く、原因も多岐に渡っているのです。

よくよく考えてみたら、ぼくは自分のガンにあまり気遣ってきませんでした。
『ガン呪縛を解く』で書きたかったのは「千島学説」のことで、
その中で言いたかったのは「現代医学の勘違い」を指摘することであって、
あの本はぼくの「ガン治癒プロセス」を記録したものではなかったからです。

ラジオ放送でも、あまり「自分のガン」について語ってこなかったと思います。
しかし今回のCDは「ぼく自身のガンの話」ですから、
となれば、やっぱりこれまでのプロセスを整理しなければなりません。
ところが、ある時期は自分がガン患者であることをほとんど忘れてしまい、
もっぱら他のガン患者の治癒サポートなどをしていましたから、
ある時期はいったいガンがどうなっていたのか、思い出すことができません。
もちろんこの4年間、病院検査には一度も行っていませんから、
経過記録もなければ、写真や数値のデータもありません。
その意味では、かなりいい加減なガン患者であったわけです〈笑〉。

実際、これまでの4年間のことを振り返ってみると、
自分のガンのことよりも、本を通して知り合ったガン患者さんのことばかりが、
次から次へと走馬灯のように思い出されてくるのです。
その中には、すっかり元気になった方々もたくさんおられますし、
また、悲しくも亡くなってしまった方々もおられます。

ガン患者を「完治」と「死」とに振り分けるものとは何だろう。
そんなことをあれこれ考えていると、あっという間に時間が経ってしまいます。

また、亡くなった方々のことを考えていると、
「あのとき、こうすれば良かったんじゃないだろうか」など、
さまざまな思いが脳裏に去来してきます。
また悔しい思いがして、じだんだを踏みたくなる衝動にもかられます。
そして思うのは、「ああ、彼(彼女)はもういないんだ」という空しさです。

そんななか、「君はもういないけれど」という言葉が思い起こされました。
これはもうずいぶん前に、ぼくが作ったカレンダーのタイトルでした。
「交通安全キャンペーン」のために、そのカレンダーを作ったのです。

そこで、改めてそのカレンダーを見てみました。
http://www.creative.co.jp/space/social/sawaguchi/index.html

そこには「ある物語」が秘められています。
その物語について、ぼくは「企画趣旨」に次のように書きました。

 昭和59(1984年)年1月、
 洞爺湖湖畔で一人の小学生が、暴走車にひかれてなくなりました。
 その名は、沢口敏くん...。亡くなったあと、その短い人生の結晶として、
 67点の絵が残されました。
 絵が大好きだった沢口敏くんは、小学3年のときから絵の勉強を始め、
 わずか3年あまりの期間に数多くの国際的コンクールの入賞を果たしてきました。
 特に亡くなる前年、ユネスコジュニア世界児童画展に出展した作品は
 「個人最優秀賞」を受け、沢口くんはその将来性を強く期待されていたのでした。
 しかし無惨にも、沢口敏くんは交通事故によって亡くなってしまったのです。
 そして昭和63年9月、沢口くんのご両親によって
 「交通安全」を願う「沢口敏・遺作展」(HTB主催)が開催されました。
 会場を訪れた多くの方々は、敏くんの絵に感動し、
 同時に「交通安全への決意」を新たに分かち合いました。
 この感動と決意をより多くの方々に......。
 それが、ここにカレンダーとして再現されることになった理由です。

このカレンダーの正式なタイトルは『描いた君は、もういないけれど』です。
そう、沢口敏くんはすでに交通事故で亡くなっていて、この世にはいないけれど、
彼は同じような犠牲者が出ないことを、きっと心から願っているにちがいない。
なぜなら不慮の事故によって、彼は愛する両親から離れてしまったのだから。
そう思ったからこそ、ぼくは彼の絵をカレンダーにしようと思ったのでした。

そのカレンダーが出来てから、今年でちょうど20年になります。
そしていま、ぼくはかつての「事故死」を「ガン死」と言い換え、
「ガン死(ガン治療死)した、君はもういないけれど...」と、
という思いにひたり、同じような決意を秘めつつあります。

そう、あのときに出会った君は、もうこの世にはいないけれど、
君が味わった苦しみや悲しみは、もう繰り返さなくてもいいようにしたい。
そうすることが、君がぼくに与えてくれた宿題なんであると。

そんな思いを抱いてスタートし、やってきた「じあいネット」でした。
その「じあいネット」に対して、早くも30名以上もの共感が寄せられました。
本当に、ありがたいものだと心より思っています。
なかには「定額給付金が出たら」という方もおられますし〈笑〉、
仕事を失って収入が全くないけれど...という方もおられます。
そんなメールが届くたび、正直、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
でも、そんな思いに支えられてこそ「宿題」を果たすことができるのでしょう。

 君はもういないけれど、同じ悲劇を繰り返さないようにと、
 ほら、こんなにたくさんの方々がぼくの宿題を手伝ってくれているよ。

悲しくも亡くなってしまった方々に対して、
ぼくは心の中でそう呼び掛けながら、ぼくのガンを語ってみたいと思います。

余談になりますが、カレンダーの企画に対して札幌市の予算がつきました。
しかしその予算は、ほんのカタチばかりのものでしたから、
市内全小中学校の全教室に配布する数量を刷るにはとても足りません。
そこで考えたのが、このカレンダーに対する個人協賛と企業協賛を募り、
協賛者すべての名前をカレンダーの下に印刷することでした。

そして、まずわが家の家族4名から協賛宣言をして、社員や知り合い、
わが社の顧客企業、さらにその周辺にどんどん広げていってもらいました。
個人協賛1000円、企業協賛1万円をお願いしながら...。
その結果「チリも積もれば山となる」で、たちまち印刷経費が捻出でき、
無事にこのカレンダーを札幌の全教室にプレゼントすることができました。

このカレンダーは、そこに沢口君の悲しい物語が秘められていたことと、
大勢の個人協賛によって実現できたことが話題となり、
ニュースステーションで久米宏さんが全国に報道してくれました。
わが社にTVカメラが入ったとき、ぼくは恥ずかしくて口ごもってしまいましたが、
その話し下手で、話が苦手だったはずのぼくが、
いまやCDでガンの話をしようとしているのですから、人生って面白いものです。
20年という歳月が、こんなカタチに結晶しようとは思ってもみませんでした。

しかも「じあいネット」をこれからも維持していくために、
20年前と同じような「協賛ネットワーク」を始めようとしています。
そのことに、とても不思議な因縁を感じます。

「君はもういなけけれど」という思いは、人間だれもが思うものかもしれません。
ぼく自身、時々いまは亡き妹や祖母、父、弟などへの思いを巡らし、
「○○はもういないけれど、○○○○するからね!」と心に誓います。

また、千島先生に対しても、
「あたたはもういないけれど、先生の快挙は必ず社会に伝えます。
 そしてガン患者さんたちに、完治への希望を与えていきたいと思います」
こう誓ってこそ、千島先生も安堵してくれるというものでしょう。

そして、願わくば、ぼく自身も、いつの日にか、
「稲田という 'おかしな人物' はもういないけれど、
 あいつはけっこう面白いことをやって生きたよな」と、
何人かの方々に時々思い出していただけるなら、本望というものでしょう。

いえ、これはぼくが近々「ガン死」するというのではありません〈笑〉。
それどころか、ぼくのガンは勝手に「完治」に向かっています。
こんな現代医学理論ではありえないことが、なぜぼくに起こったのか。
そのことを、CDの中でうまく話せたらいいのですが...。

稲田芳弘

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http://www.creative.co.jp/m/mmm/index.cgi

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